交通事故時に知っておきたい評価損の基礎知識を徹底解説
交通事故被害者は、車の修理代だけでなく「評価損」と呼ばれる損害についても請求できる可能性があります。ただし、評価損請求には認められやすいケースと評価損請求が難しいケースが存在するため、状況に応じた対応が大切です。
今回は、交通事故時に知っておきたい評価損の基礎知識を徹底解説します。本記事を読めば、評価損とは何か?という基礎的な部分から、評価損請求が認められやすいケースと評価損請求が難しいケース、算定方法や注意点が分かるので、少しでも気になる方は、ぜひご一読ください。
交通事故における評価損とは?
自動車は事故に遭うと事故前と比較して売却価格が低下することがあります。このように、事故が原因で車両価格が低下することで生じる損害を評価損と呼びます。
ここで理解しておかなければいけないのが、事故によって車両価格が低下する理由です。まずは、車両価格が低下する2つの理由から見ていきましょう。
・技術上の評価損
車を修理しても技術上の限界により、完全には元に戻らないケースがあります。これが技術上の評価損です。技術上の評価損は機能や外観に欠陥が残ることも少なくないので、基本的に評価損の請求は認められやすくなります。しかし、修理技術の進化により最近では技術上の評価損が発生するケースはそれほど多くありません。
・取引上の評価損
車を修理して元の状態に戻しても、事故があった事実は消えません。そのため、事故歴が残ることになります。もちろん、修理歴も同様です。そのため、外観や安全性能に問題がなくても売却価格が低下することになります。これが取引上の評価損です。
事故歴があると隠れた傷や故障があるかもしれないと考えられたり、そもそも事故車両は縁起が悪いと考えられたりするため、売却価格が低下します。
評価損請求が認められやすいケース
事故が原因で車両価格が低下すれば、必ず評価損請求が認められるわけではありません。なぜなら、評価損請求を認めてもらうには、評価損が発生している根拠を示さなければいけないからです。
ただし、比較的評価損の請求が認められやすいケースも存在します。ここからは評価損の請求が認められやすい5つのケースを見ていきましょう。
新車に近い状態
基本的に新車であるほど、評価損の請求は認められやすい傾向にあります。なぜなら、新車に近い車ほど売却価格は高くなるからです。新車状態の車両が事故車両になると売却価格の下落率は大きなものとなるので、評価損として補償するべきと考えられていることも大きく関係しています。
なお、新車に近い状態と判断される目安は車種によって異なるので注意してください。基本的には国産高級車や人気車種は購入から5年以内、その他の国産車が3年以内とされています。
走行距離が少ない
走行距離が少ないほど、中古市場においては車両価格が高くなります。そのため、走行距離が少ない車両が事故車両になると価値の下落率が大きくなるので評価損請求が認められやすくなるのです。
なお、少ない走行距離の目安は下記を参照してください。
国産高級車や人気車種:6万km以内
外国車:6万km以内
その他の国産車:4万km以内
骨格部分の損傷
自動車には強度を保つための構造部分があり、これを骨格部分と呼びます。この骨格部分を損傷した車両は評価損の請求が認められやすくなります。
骨格部分の修理や交換を実施した車両は一般財団法人日本自動車査定協会が定める修復歴車(事故車)に該当するため、車両価格に大きく影響を与えるのが理由です。
具体的なパーツは下記の通りです。
フロントサイドメンバー(前方の主要フレーム)
センターピラー(サイドの柱)
ダッシュパネル(エンジンと車室の仕切り)
フロアメンバー/クロスメンバー(車体底面の骨組み)
ホイールハウス(タイヤを覆う部分)
ルーフパネル(屋根)
サイドメンバー(側面フレーム)
リアフレーム(後方フレーム)
メンバー(車体底面の補強材)
修理費用が高額なケース
車両の損傷が激しいと修理費用は高額になります。このような場合、事故が車両の価値に大きな影響を与えたと判断される可能性が高くなるので、評価損の請求が認められやすくなる傾向があります。
高級車や人気車
高級車や人気車種は中古車市場においても高い需要を誇ります。ただし、事故車両になると価値の下落率が大きくなるので評価損として補償するべきと判断されるケースが少なくありません。そのため、高級車や人気車種は評価損の請求が認められやすい傾向にあります。
評価損請求が難しいケース
評価損請求が認められやすいケースがある一方で、評価損請求が難しいケースも存在します。ここからは、評価損請求が難しい4つのケースを見ていきましょう。
車のローンを返済している途中の場合
評価損は車両の所有者に生じる損害なので、ローンを返済している場合は基本的に評価損の請求を行うことはできません。中には、ローンを返済している場合でも所有者は自分だと考える方もいらっしゃいます。しかし、原則としてローン返済中の車両所有者はローンを組んでいる金融機関やローン会社になり、ローンを返済している人は所有者ではなく使用者になるのです。ただし、所有者が「評価損の損害賠償請求権は使用者にある」ことを合意していれば、使用者であっても評価損を請求できます。
車がリース契約の場合
リース契約の場合も、基本的に評価損請求はできません。理由はローン返済中のケースと同じで、所有者はリース会社になっているからです。
ただし、過去には事故後にリース会社に精算金を支払うことでリース契約を途中解約して使用者の評価損請求を認めた事例もあります。
価値が下がったと認められないケース
評価損は、事故により車両価値が下がることで生じる損害です。そのため、事故後と事故前の車両価値が大きく変わらないケースでは評価損請求は難しくなります。
例えば、古い車両や走行距離が多い車両は中古車市場における価値は低いと判断されるため、事故後と事故前では、それほど価値は変わりません。このようなケースでは評価損請求が難しくなります。評価損は事故が原因で価値が大きく下がった場合に生じる損害です。そういう意味では、事故前の価値が重要になることを覚えておきましょう。
全損状態
評価損の本質は、修理によって生じた車両価値の下落を補償することです。そのため、車両が全損した場合は請求できません。なお、車両の全損とは修理が不可能な状態だけでなく、修理費用が車両保険金額以上になる場合も指します。つまり、修理費用が事故前の車両価格を上回るケースでは全損扱いとなるので、基本的に評価損の請求はできません。
評価損の算定方法
評価損を請求する際には算定方法について理解しておくことが重要になります。なぜなら、評価損請求の算定方法には複数の種類が存在するからです。
ここからは、評価損の算定方法について詳しく見ていきましょう。
総合勘案基準
数ある評価損の算定方法の中で、最も総合的な判断とされているのが総合勘案基準です。車種や走行距離、初年度登録からの期間や車両の損傷個所、修理費用などを総合的に勘案して算出されます。
総合的に判断するという意味で、訴訟に発展した場合に用いられやすいのが1つの特徴です。
売却金額基準
場合によっては、事故前に既に売却行為を進めていたケースもあるでしょう。このような場合は、既に業者から見積もりを貰っているケースも少なくありません。業者から見積もりを貰っている事例においては、売却金額基準が用いられることがあります。
事故前の売却予定額が判明していると、事故後の売却額との差を明確に示すことが可能です。そのため、予定されていた売却額と事故後の売却額との差額を評価損として算定することができます。
事故前の売却予定額が分かっているケースでは非常に有効な算定方法といえるでしょう。
修理費基準
示談交渉において最も用いられる算定方法が「修理費基準」です。こちらは、名前の通り実際にかかった修理費を基準として算定する方法になります。
具体的な方法としては、実際にかかった修理費用の一定割合を評価損とする算定方法です。なお、これまでの裁判例では修理費用の10%~30%程度が評価損として算定されるケースが多くなっています。
車両時価基準
車両時価基準とは、事故当時における車両時価の一定割合を評価損と考える算定方法です。具体的には、車種、年式、型式、走行距離や使用状況などが近い中古車を取得するのに必要な金額を基準とします。
過去の裁判では車両時価の10%が評価損として認定されたケースがあるので、1つの参考として覚えておきましょう。
査定協会基準
一般財団法人日本自動車査定協会に査定してもらった「自己減価額証明書」に記載された金額を評価損とする方法が査定協会基準です。全国統一基準なので、公平性を保てるだけでなく、安心して依頼できるのが大きな特徴になります。ただし、事故減額証明書の発行には車検証や修理見積書等の書類が必要になるだけでなく、一定の費用がかかることを理解しておかなければいけません。
評価損の請求方法と注意点
事故により車の評価損が発生した場合は、保険会社が補償してくれると考える方も少なくありません。しかし、保険会社によっては支払う損害賠償金を少しでも抑えるために評価損を認めようとしないケースもあります。そのため、正当な補償を受け取るためには正しい請求方法と注意点を理解しておかなければいけません。
ここからは、評価損の正しい請求方法と注意点を詳しく見ていきます。正当な補償を受けるためにも重要なポイントになるのでしっかりと理解しておきましょう。
評価損の請求方法
事故によって車の評価損が発生すると、基本的に相手方の保険会社と示談交渉して損害賠償請求することになります。示談交渉は、当事者同士の話し合いでトラブルを解決する方法なので、裁判のように明確な基準が示されることはありません。
具体的な示談の流れとしては、事故で生じた損害内容や損害金額、過失割合に応じた話し合いを重ねていき、示談金の額が決められていきます。そのため、必ずしも公平性が保たれているわけではありません。実際、保険会社によっては支払う損害賠償金を少なくするために評価損を認めないケースもあるようです。
具体的な事例としては「車両価値下落の明確な根拠がない」といったものや「具体的な価値下落を示す根拠がない」といったものがあります。実際、評価損は事故前の車両売却額が判明していなければ算定が難しいのも事実です。ただし、日本自動車査定協会に依頼して事故減価額証明書を出してもらうことで評価損の請求根拠とできる可能性があります。
なお、事故減価額証明書の取り寄せ方は下記の通りです。
1.車検証、保証書、修理見積書などの必要書類を用意する
2.最寄りの日本自動車査定協会に問い合わせる
3.査定を受ける
4.日本自動車査定協会から事故減価額証明書が郵送されてくる
ここで、理解しておきたいポイントは査定額がそのまま評価損として認められるとは限らないことです。実際、過去の裁判においては評価過程に充分な根拠があると認められずに修理費用の20%だけが評価損として認定されたケースもあるので覚えておきましょう。
押さえておきたい注意点
示談交渉とは、当事者同士の話し合いにより問題の解決を目指す行為になります。交通事故における示談交渉も同様です。そのため、保険会社との示談交渉においては専門的な知識が1つの武器になることを覚えておいてください。
ここで、ポイントになるのが弁護士などの専門家への依頼です。法律の専門家である弁護士が間に入ることで、保険会社は正当な評価損や損害賠償金を認める可能性が高くなります。なぜなら、弁護士が介入することで裁判に発展する可能性がでてくるからです。基本的に示談交渉において評価損を認める保険会社は多くありません。そのため、評価損の請求を検討している場合は、早めに弁護士に相談しておくことが重要です。
弁護士に依頼すると聞くと、多くの方は費用面を心配されます。実際、事故の内容によっては回収した損害賠償金よりも弁護士費用の方が高くなる「費用倒れ」が生じるケースも少なくありません。
ただし、費用面を心配するあまり、すべてを自分だけで解決しようとするのは大変です。このような場合は、弁護士事務所や法律事務所が実施している無料相談の活用を検討しましょう。弁護士事務所や法律事務所の中には、無料相談を実施しているところもあるので、無料相談を利用して事故の概要を伝えたうえで依頼した方がいいのかを相談することができます。
少しでも不安が残る場合は、一度、無料相談の活用を検討してください。
まとめ
交通事故で車が損傷して修理しても、完璧に事故前の状態に戻ることはありません。なぜなら、事故歴や修理歴は残るからです。そのため、事故前の売却額と事故後の売却額に大きな違いがでてくることがあります。これが評価損です。
このような評価損が発生した場合、評価損を請求できるケースがあります。ただし、評価損を証明するには、専門的な知識が欠かせません。そのため、評価損請求を検討している場合は、早めに弁護士に相談する必要があります。保険会社との示談においては、弁護士の介入が結果を左右することも珍しくありません。正当な損害賠償金を手にするためにも、専門家の介入は重要です。
また、事故後は精神的な疲れがたまるだけでなく、怪我をしているケースもあるので、専門家に任せたうえで、しっかりと休むことも重要になります。
すべてを自分で解決しようとする気持ちは大切かもしれませんが、心身共に無理をしないためにも少しでも不安が残る場合は、早めに専門家に相談してください。
この記事の監修者

弁護士法人i 代表弁護士
黒田 充宏
開業以来、地元市民の皆様から交通事故に関する多数の相談を受けて参りましたが、残念なのは簡単なアドバイスで解決できることにもかかわらず、ずっと一人で悩んでおられる方が多数いらっしゃるということです。相談後に「誰にも話せずに悩んでいたけれども、もっと早く相談に来ればよかった」と仰る依頼者の方が意外と多いものです。特に交通事故に関するご相談では、「もう少し早く相談してくれれば、適切なアドバイスができたのに」と思うことが多々あります。交通事故の法的トラブルについては、時機を失うと大きな損失につながる可能性があります。「こんなことで相談してもよいのかな」と心配する必要はありません。当事務所では、経験豊富な弁護士がいつでもお待ちしております。身近な町医者として、今後とも精進する所存ですので、困ったときにはいつでもご相談ください。
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