自転車ヘルメット着用の義務違反に罰則はあるの?自転車ヘルメットに関する基礎知識を徹底解説

2023年の4月1日以降、自転車に乗る際にはヘルメットの着用が努力義務化されました。ニュースなどで大きく報道されたこともあり、この事実を知っている方は少なくありません。その一方で、具体的な内容や義務違反時に罰則があるのかどうかを知っている方は少ないのが現実です。

今回は、自転車のヘルメット着用と義務違反時の罰則の有無について詳しく解説します。本記事を読めば、自転車ヘルメットに関する基礎知識だけでなく、義務違反時の罰則の有無やヘルメット選びのポイントが分かります。ご自身だけでなくご家族の安全を守る上でも欠かせない知識になるので自転車を使用されている方は、ぜひご一読ください。

自転車のヘルメット着用に関する基礎知識

2023年の4月1日から自転車に乗る際はヘルメットの着用が努力義務化されました。ここで、ポイントになるのが義務ではなく、努力義務である点です。

では、努力義務と義務の違いはどこにあるのでしょうか?なぜ、努力義務化する必要があったのでしょうか?また、努力義務違反した場合に罰則はあるのでしょうか?

まずは、自転車ヘルメット着用に関する基礎知識を見ていきましょう。

努力義務

義務とは、守らなければいけないルールのことです。法的に定められている場合は、守らなければ罰金や罰則が科されることもあります。そういう意味では、強制力を持つといえるでしょう。具体的な例としては、納税義務や子どもに教育を受けさせる保護者の義務、バイクの運転時のヘルメット着用が該当します。これらのルールを守らなければ罰金や罰則が科されることになるため、多くの方は義務を守りながら生活しているのです。

一方、努力義務は義務という言葉が使われていますが、強制力はありません。なぜなら、努力義務とは「守るように努めなければならない」という言葉通り、個人に努力を求めることに留まるものだからです。そのため、違反しても直ちに法的責任を問われることはありません。ただし、努力義務には社会的に望ましい行為を推奨するという一面があるため、可能な範囲で遵守することが期待されています。

道路交通法(第63条の11)の改正により、自転車のヘルメット着用は努力義務化されました。では、改正前と改正後では具体的に何が変わったのでしょうか?ここからは、具体的な変更点を見ていきましょう。

改正前は「児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児を自転車に乗車させるときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない」と規定されていました。これが、以下のように改正されたのです。

道路交通法 第63条の11

第1項

自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない。

第2項

自転車の運転者は、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。

第3項

児童又は幼児を保護する責任のある者は、児童又は幼児が自転車を運転するときは、当該児童又は幼児に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない。

つまり、年齢を問わずすべての自転車利用者はヘルメットの着用が努力義務化されたということです。また、同乗者に対してもヘルメットを着用させるように努める必要があります。

努力義務化の背景

自転車のヘルメット着用について正しく理解するには、努力義務化された背景を知っておくことも重要になります。なぜなら、背景を知ることでヘルメット着用の重要性が分かるからです。ここからは、努力義務化された背景を見ていきましょう。

自転車ヘルメットの着用が努力義務化された背景には、増え続ける自転車事故が大きく関係しています。

現在、交通事故における自転車事故の割合は増加傾向です。自転車にはシートベルトなど身を守る機能が備わっていないため、身体を守るアイテムを身につけておくことが重要になります。この時、大きな役割を果たすのがヘルメットです。

もちろん、ヘルメットを着用してもリスクをゼロにすることはできません。ただし、ヘルメット未着用の場合と比較するとリスクを大きく軽減することができます。実際、警視庁はヘルメットを着用していた場合と、着用していなかった場合では致死率に大きな違いがあると公表していて、ヘルメット未着用の致死率は、着用時と比べて2.2倍も高いことが公表されているのです。

増え続ける自転車事故のリスクを少しでも軽減させる。これが、自転車ヘルメットの着用が努力義務化された大きな目的なのです。

努力義務と罰則

これまで説明してきた通り、努力義務と義務は違います。義務は強制力がある一方で、努力義務に強制力はありません。では、罰則はどうなるのでしょうか?

基本的に義務を守らなければ罰金や罰則が科されます。しかし、努力義務に違反しても罰金や罰則は存在しません。なぜなら、努力義務には法的拘束力がないからです。あくまで、努力義務は個人の努力に委ねられています。

この説明を見た方の中には、罰金も罰則がないのであれば、着用しなくても大丈夫と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ヘルメットはご自身やご家族の安全を守る上で重要な役割を果たします。そのため、罰金や罰則がないからといって安易な選択をしないことが重要です。

いまの選択が、将来のリスク軽減に繋がることを覚えておきましょう。

努力義務違反の注意点

自転車ヘルメット着用は道路交通法により努力義務化されました。努力義務とはいえ、法律で定められていることに違いはありません。そのため、ヘルメット未着用の状態で損害賠償の対象になる事故を起こしたときは、賠償額で不利になる可能性があります。もちろん、これは可能性の話なので、必ず賠償額で不利になるとは限りません。しかし、大きなリスクといえます。

弁護士などの専門家に相談しても事故当時の状況を変えることはできません。不利な状況を作らないためにもヘルメットは重要な役割を果たすことを覚えておきましょう。

自転車事故のリスク

令和5年度に公表された警察庁交通事故統計の「自転車乗用中における人身損傷主部位別死者数」を見ると、死者の半数は頭部損傷が原因です。また、死者数の90%はヘルメット未着用であるとされています。ヘルメット着用時と比較すると2倍以上の違いがあるのです。

このデータを見ると、ヘルメットで頭部を守ることは非常に重要であることが分かります。一昔前までは、自転車のヘルメットは子どもが着用するものというイメージがあったかもしれません。しかし、自転車事故で亡くなっているのは子どもだけではないのです。そういう意味でも、ヘルメットの着用は年齢に関係なく重要になります。

ヘルメットの着用で、自転車事故リスクを大きく軽減できることを忘れないでください。

自転車のヘルメットを選ぶポイント

ヘルメット着用で自転車事故のリスクを軽減できることが分かりました。ただし、注意しなければいけないポイントがあります。それが、着用するヘルメットの選び方です。ここからは、自転車ヘルメットを選ぶときのポイントについて詳しく解説します。

安全規格の認証マーク

自転車ヘルメットを選ぶうえで、最も大切になるのが安全性の高さです。では、どのような基準で安全性を確認すればいいのでしょうか?1つのポイントになるのが安全規格の認証マークです。

実は、自転車ヘルメットの素材や構造は製品によって違うため安全性にも違いがあります。しかし、素人が簡単に判断できるものではありません。そこで、参考にしたいのが安全規格の認証マークです。

安全規格の認証マークは、基準を満たしたヘルメットでなければ付けることができません。ただし、覚えておきたいポイントがあります。それが、認証マークにもさまざまな種類があるということです。

ここからは、広く知られた認証マークを紹介していきます。ヘルメットの安全性を重視したい方は、ぜひ参考にしてください。

JCF公認/推奨マーク

JCF公認推奨マークは、日本自転車競技連盟が定めた安全基準をクリアしたヘルメットに付けられるマークです。競技用自転車で使用されるヘルメットの安全性が保障されていることもあり、信頼性の高さが1つの特徴になります。

SGマーク

SGマークは「一般財団法人製品安全協会」が定めた基準をクリアした製品に付けられるマークです。そんなSGマークの大きな特徴の1つが賠償制度です。実はSGマーク付き製品の欠陥により人身事故が発生した場合は、賠償制度が用意されています。2重の備えができるのは、他の認証マークにない大きな特徴といえるでしょう。なお、賠償制度の詳細については一般財団法人製品安全協会の公式サイトで詳しく解説されているので、気になる方は目を通しておきましょう。

CPSCマーク

CPSCマークは、アメリカ合衆国消費者製品安全委員会が定めた基準をクリアした製品に付けられるマークです。基本的に、アメリカで販売される製品はCPSC規格をクリアすることが義務付けられています。

ヘルメットと一括りにしても、素材や構造にはさまざまな違いがあります。だからこそ、安全性の高さを確認しておくことは非常に重要です。安全性が高いヘルメットを選ぶためにも、安全規格の認証マークの確認は忘れないようにしてください。

適切なサイズ選択

自転車ヘルメットは、自分に合ったサイズを選ぶことも重要です。サイズが合っていなければ、転倒時に脱げてしまう可能性があります。いざという時に脱げてしまうと、本来の役割を果たすことはできません。

また、走行中にヘルメットがズレてしまい視界が遮られると転倒するリスクも高まります。自分を守るために身につけたヘルメットが原因となり、事故を引き起こしてしまう危険性もあるのです。このような事態を避けるためにも、ヘルメットは自分に合ったサイズを選択しなければいけません。

適切なサイズ選択のためには、購入前の試着が重要です。あご紐を締めた状態で頭を前後左右に揺らしてヘルメットがズレないかを必ず確認しておきましょう。

状況に合わせた選択

自転車ヘルメット選びでは、状況に合わせた選択も重要です。状況に合わせた選択と聞くと、不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、人によって自転車を運転する状況には違いがあります。例えば、昼に乗ることが多いケースもあれば、夜に乗ることが多いケースもあります。夜に乗ることが多い場合は、視認性に優れた明るい色のヘルメットを選ぶことが重要です。明るい色のヘルメットは、夜道でも目立つため危険から身を守ることに繋がります。

また、季節に合わせた選択も重要です。夏場に長時間乗る場合は通気性の良いヘルメットを選ぶと熱中症のリスクを軽減することができます。

さらに、会社までの移動手段として自転車を使用する場合はサイクルキャップを選ぶことで、髪型が崩れる問題をクリアすることも可能です。

状況に合わせたヘルメットを選択して、安全性でだけでなく利便性も高めていきましょう。

自転車ヘルメットの相場とお得に購入する方法

自転車を安全に使用するためにもヘルメットの存在は欠かせません。ただし、ヘルメットを購入するには費用がかかります。この点が気になる方もいらっしゃるでしょう。そこで、ここからは自転車ヘルメット価格の相場と、お得に購入できる方法について解説していきます。

自転車ヘルメットの価格相場

一括りに自転車ヘルメットの相場といっても、簡単に把握できるものではありません。なぜなら、自転車ヘルメットは種類が豊富なため、さまざまな価格帯の商品があるからです。比較的安い商品であれば2,000円程度で購入できる一方、競技用のヘルメットなどは数万円することも珍しくありません。そのため、相場の把握が難しくなっているのです。ただし、購入時に目安として覚えておきたい価格帯は存在します。それが中央価格帯です。

中央価格帯とは、価格設定において最も多くの人が購入している価格帯のことで、ボリュームゾーンとも呼ばれています。もちろん、好みなどもあるため一概に正解とはいえませんが、1つの目安となるので覚えておいて損はありません。なお、自転車ヘルメットの中央価格帯は6,000円から8,000円程度とされています。

どの価格帯のヘルメットを購入すればいいのか悩まれた場合は、中央価格帯を参考にしてみるのも1つの方法です。

補助金の活用

実施している自治体は、それほど多くありませんが、指定された自転車用ヘルメットを購入すると、補助金を支給してくれる自治体が存在します。

基本的に補助金を活用する場合は申請が必要になるため、ヘルメット購入前には自治体のHPをチェックして活用できる補助金制度の有無を確認しておきましょう。

まとめ

自転車ヘルメットの着用は努力義務化されました。しかし、努力義務には法的拘束力が存在しないため、違反しても罰金や罰則が科せられることはありません。そのため、ヘルメットを着用しなくても大丈夫と考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、自転車事故で死亡された方の半数は頭部への損傷が原因とされています。また、頭部損傷が原因で亡くなられた方の90%がヘルメットを着用していなかったという事実があるのです。

この数字からも分かる通り、自転車を運転する際にヘルメット着用は非常に重要な役割を果たします。特に、高齢者の方は気を付けなければいけません。なぜなら、2018年から2022年の合計では、死亡された方や重症となった方の割合が他の世代よりも多くなっているからです。

事故はいつ起こるか分かりません。だからこそ、いざという時のために備えておくことが重要です。ご自身だけでなく、大切な家族を守るためにも自転車を運転する際はヘルメット着用を心がけてください。

この記事の監修者

弁護士法人i 代表弁護士

黒田 充宏

開業以来、地元市民の皆様から交通事故に関する多数の相談を受けて参りましたが、残念なのは簡単なアドバイスで解決できることにもかかわらず、ずっと一人で悩んでおられる方が多数いらっしゃるということです。相談後に「誰にも話せずに悩んでいたけれども、もっと早く相談に来ればよかった」と仰る依頼者の方が意外と多いものです。特に交通事故に関するご相談では、「もう少し早く相談してくれれば、適切なアドバイスができたのに」と思うことが多々あります。交通事故の法的トラブルについては、時機を失うと大きな損失につながる可能性があります。「こんなことで相談してもよいのかな」と心配する必要はありません。当事務所では、経験豊富な弁護士がいつでもお待ちしております。身近な町医者として、今後とも精進する所存ですので、困ったときにはいつでもご相談ください。

 

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