駐車場内でバックしてきた車との交通事故|過失割合はどうなる?

ショッピングセンターや勤務先など、日常的に自宅以外の駐車場に駐車する機会がある人は多いでしょう。では、もしも駐車場で交通事故が発生した場合にはどうすればよいでしょうか。

特にバックしてきた車に大切な愛車がぶつけられてしまった場合、「相手が不注意だったのだから」と思っていても、思わぬ過失割合の提示に納得できないというケースも少なくありません。

そこで、本記事では駐車場内の交通事故をテーマに、バックしてきた車との過失割合の考え方や、事故時の対処法について詳細を解説します。

【駐車場内の後退車との事故】過失割合の考え方とは

駐車場内の事故は、公道上の事故と比較すると目撃者がいなかったり、駐車状況が複雑になりやすかったりと、過失割合の判断が難しいケースが少なくありません。さらに、駐車場は「道路交通法上の道路」と見なされない私有地であることも多く、過失割合を決める際には慎重に事故状況を判断する必要があります。

一般的に過去の判例から導かれた過失割合が適用されています。今回のテーマである「バック(後退)」が事故の原因になっている場合、後退する側の過失割合が大きくなる傾向があります。

本章ではバックしてきた車(以下、後退車)との事故について、よくあるケース別に過失割合を解説します。

後退車が停車中の自車にぶつかってきた

  • 過失割合  後退車 100% :自車 0%

停車中の車両は、基本的には事故を予見・回避する義務がないため、過失はないとされるのが一般的です。

後退車が徐行している自車にぶつかってきた

後退者がぶつかってきた場合でも双方の車両が動いているケースでは、過失割合が複雑になります。駐車場内では、通路の広さや駐車区画からの出入りの状況によって、以下のような複数の類型が考えられます。

①通路を直進している自車に駐車スペースから後退してきた車がぶつかってきた

駐車場内で通路を走行している自車は、一般的に「本線」として優先されます。

  • 過失割合 後退車 80〜90% :自車 10〜20%

駐車場内では常に安全を確認し、危険を予見した場合は減速・停止する義務(危険予知義務)があるため、徐行中の自車側にも10〜20%程度の過失が認められることが多くなっています。

②相互に後退(バック)している場合(すれ違いざまなど)

このケースでは双方とも視界が限定されやすい後退操作を行っているため、過失割合は公平に分担される傾向があります。

  • 過失割合 後退車 50% :自車 50%

ただし、どちらか一方の車両が後退禁止の場所で後退していた、あるいは後方の安全確認を著しく怠っていたといった事情があれば、過失割合は変動します。

自車が公道を直進中に駐車場からの後退車にぶつけられた

公道を走行している車両と、駐車場(私有地)から公道に出ようとしている車両との事故もよくあるケースです。

  • 過失割合 後退車 80% :自車 20%

道路交通法上、公道に出る車両はすでに公道を走行している車両の通行を妨げてはならないという義務があります。一方で、公道走行中の自車も一定の過失はあると判断されています。

駐車場を歩行中・自転車走行中に後退車からぶつけられた

車両と歩行者・自転車の事故は、交通弱者保護の観点から、歩行者・自転車の過失割合は低くなります。

  • 過失割合  後退車 100% :歩行者・自転車 0%

駐車場内であっても、歩行者や自転車は優先されます。後退車は、死角が多くなる操作を行うため、歩行者や自転車がいないかを丁寧に確認する義務があります。

ただし、歩行者や自転車に「著しい過失」や「重過失」があった場合には、例外的に過失が認められる可能性はあります。

被害者側の過失割合が大きくなりやすいケースとは

ここまで解説した基本的な過失割合は、あくまで「標準的な状況」で適用されるものです。実際に過失割合を判断する際には、事故の状況や運転手の行動など、さまざまな「修正要素」によって増減します。

被害者に見える側(停車中の車など)であっても、示談交渉で不利になったり、解決に時間を要したりする可能性はあるため注意が必要です。では、被害者側であっても過失割合が大きくなりやすいケースとはどのようなものでしょうか。

被害者側の車両が不適切な駐車や停車だった

停車していた車両に後退車がぶつかった場合でも、その停車位置が著しく不適切であった場合、被害者側にも過失が加算されることがあります。

  • 例 通路の大部分を塞ぐような二重駐車や斜め駐車だった

駐車が禁止されている場所への停車だった

これらの行為が事故の発生を誘発したと認められれば、被害者側にも10〜20%程度の過失が認められる可能性があります。

相手車両がバックしていると気付いているのに警告を怠った

相手車両がバックしていることに気付いていたにもかかわらず、クラクションを鳴らすなどの警告措置を怠った場合、過失が加算されることがあります。

駐車場内では、運転手は周囲の状況に常に注意を払う「注意義務」があります。危険を認識しながらそれを回避するための行動をとらなかったことは、「過失」と見なされることがあるため注意が必要です。

被害者側がスマホやナビを操作していて注意を怠った

被害者側の運転手が、事故直前にスマートフォンを操作していたり、カーナビを注視していたりなどの理由で周囲への注意が散漫になっていた場合、「著しい過失」として過失割合が加算されるおそれがあります。

本来なら事故を予見し、クラクションやブレーキ操作で事故を回避できた可能性があったと判断されるためです。加算された場合、10〜20%程度の過失加算の対象となります。

重過失が認められるケースにも注意

被害者側であっても、以下の「重過失」が認められる場合には、基本過失割合に30〜50%もの大幅な過失が加算される可能性があります。

  • 酒酔い運転
  • 居眠り運転
  • 薬物の摂取
  • 無免許運転 など

こうした行為は、ご自身で加入している自動車保険が保険会社の「免責事由」に該当する可能性が高く、ご自身への保険金の支払いが受けられなくなるおそれもあります。(※)

(※)契約者や被保険者による酒酔い運転や無免許運転などの重大な法令違反があった場合でも、原則として事故の被害者への賠償金は支払われます。

駐車場内の交通事故は揉めやすい?トラブルになる理由とは

駐車場内の交通事故は公道での交通事故に比べて示談交渉が難航し、「揉めやすい」傾向があります。では、どうして駐車場内での交通事故はトラブルに発展しやすいのでしょうか。本章でわかりやすく解説します。

双方の主張が異なる

公道での事故の場合、信号の色や一時停止の有無など事故状況を判断する材料が多いですが、駐車場にはこうした公道上のルールがないため、事故後の双方の主張が異なり、ぶつかりやすくなります。

  • どちらが先に動いたか
  • どちらがどの程度の速度で走行していたか

双方のドライバーが「自分は徐行していた」「相手が急にバックしてきた」などと、自車に有利な主張を展開し、話が食い違ってしまうケースが多くなり、過失割合を決める際にも時間を要することが少なくありません。

警察に通報していなかった

駐車場での車両同士の事故は軽微なものも多く、事故を警察に通報しないケースも見られます。通報しない場合、警察が作成する「交通事故証明書」が作られないため、その後にトラブルに発展するおそれがあります。

交通事故証明書は、事故発生の事実と事故当事者を確認するための公的な書類です。ケガをしている場合は治療費や休業損害の支払いのために、交通事故証明書が必要となるため、事故直後は軽微な事故に見えたとしても、警察に通報することが大切です。

警察に通報しない場合、事故の相手方が「そもそも事故などなかった」「損傷は別の原因だ」などと主張するおそれもあります。

被害者側の過失割合を争うケース

公道上の追突事故などでは、追突した側が100%過失を負うことが一般的です。しかし、前述の通り、駐車場内の事故で特に後退車との事故では、動いている車両同士である場合、被害者側にも少なからず過失が認められる傾向があります。

例えば、「後退車 80% :直進車 20%」という過失割合が提示された場合、被害者側が自身の不注意を指摘されることになるため、過失割合をめぐって争うケースも少なくありません。

駐車場内の交通事故の適切な対処法とは

駐車場内で事故に遭った場合でも、公道上の事故と同様に、適切に初期対応を行うことが大切です。初期対応はケガの重篤化を防ぎ、示談交渉や保険金請求にも欠かせません。本章ではおさえておきたい駐車場内事故の適切な対処法について解説します。

1. 速やかに警察へ連絡する

たとえ駐車場内であっても、人身事故・物損事故にかかわらず必ず警察に通報し事故報告を行いましょう。

  • 負傷者の救護(義務) 
  • 警察への通報(義務)
  • 安全確保(三角表示板の設置など)

警察に通報することで、交通事故証明書が発行され事故の客観的な記録が残ります。相手方から「大事にしたくないから警察は呼ばないでほしい」と頼まれても、警察への通報を怠らないようにしましょう。また、相手方の車両のナンバー、運転者の名前や連絡先、加入先の保険会社名なども確認してください。

なるべく早く受診する

身体に少しでも痛みや違和感がある場合は、遅くとも数日以内に病院を受診してください。特に首の痛み(むちうち)は、事故直後には症状が出ずに数日経ってから発症することがあります。

事故から受診までに時間が空いてしまうと、「事故とは関係ない怪我ではないか」と保険会社から疑われ、治療費の支払いや慰謝料請求で不利になる可能性があります。

保険会社へ事故報告を行う

事故後はなるべく早い段階で、自身が加入している自動車保険の保険会社に報告を行います。

保険会社は事故後の対応のアドバイスや、相手方との示談交渉を代行してくれます。示談交渉の専門家である保険会社に任せることで、精神的な負担を大きく軽減できます。

弁護士へ相談する

提示された過失割合に納得がいかない、相手方の主張が食い違っている、治療が長引き慰謝料の金額に不安があるなど、交渉が難航し始めたと感じたらすぐに弁護士に相談しましょう。

特に、駐車場内の事故は過失割合の判断が専門的で複雑です。弁護士は、過去の判例や詳細な事故状況に基づいて適切な過失割合を主張し、示談交渉を進めてくれます。

また、加入している自動車保険に「弁護士費用特約」が付帯されていれば、法律相談料や弁護士への依頼に関する費用を保険会社が負担してくれるため、費用を気にすることなく専門家のサポートを受けることができます。

バックによる事故で加害者側に請求できるもの

駐車場内でバックしてきた車にぶつけられ、被害者となった場合、加害者側に対して事故によって生じた損害の賠償(損害賠償請求)を行うことができます。
損害賠償の対象は「物に関する損害」「ケガに関する損害」「精神的損害」など多岐にわたります。詳しくは以下のとおりです。

車両や携行品に関する損害費用

バック事故で車両に傷や凹みが生じた場合、以下のような費用を請求できます。

  • 修理費用

バンパー交換・鈑金塗装など

  • 代車費用

修理の間に車が必要な場合

  • 携行品の破損
    車内にあったPC、スマホ、メガネなどが壊れた場合は、その修理費や買い替え費用も対象です。

ケガに関する費用

事故によってむちうち症状や打撲などのケガを負った場合、以下が請求可能です。

  • 治療費(薬代・リハビリ費用など)
  • 通院交通費
  • 休業損害(パートや自営業、専業主婦なども含め入通院で働けなかった場合の補償)
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害等級が認定された場合の後遺障害慰謝料・逸失利益

後遺障害等級の申請は多くの書類を整える必要があり、医師の診断書も必要です。申請にあたっては弁護士へ相談しながら進めることが望ましいでしょう。

請求できないものとは

事故時には加害者側の保険会社へ多くの費用や慰謝料を請求できますが、事故との因果関係が認められないものは請求できません。

  • 事故前から壊れていた車両・物品の修理費
  • 医師が必要と認めていない過度な治療や整体費用 など

上記以外にも事故と被害の因果関係が証明できない費用については支払われないおそれがあるため、あらかじめ弁護士に相談することがおすすめです。

まとめ

本記事では、駐車場内でバック(後退)してきた車との交通事故に焦点を当て、過失割合の基本的な考え方やトラブルになりやすい理由、そして適切な対処法について解説しました。

駐車場内での事故は、過失割合の判断が複雑になりやすいケースが少なくありません。また、事故後の保険会社との示談交渉や保険金の請求は被害者に大きな負担となりやすいため注意が必要です。

特に過失割合に疑問や不安を残したままにすると、得られる補償内容が少なくなるおそれがあります。まずはお気軽に交通事故に精通する弁護士へご相談ください。

この記事の監修者

弁護士法人i 代表弁護士

黒田 充宏

開業以来、地元市民の皆様から交通事故に関する多数の相談を受けて参りましたが、残念なのは簡単なアドバイスで解決できることにもかかわらず、ずっと一人で悩んでおられる方が多数いらっしゃるということです。相談後に「誰にも話せずに悩んでいたけれども、もっと早く相談に来ればよかった」と仰る依頼者の方が意外と多いものです。特に交通事故に関するご相談では、「もう少し早く相談してくれれば、適切なアドバイスができたのに」と思うことが多々あります。交通事故の法的トラブルについては、時機を失うと大きな損失につながる可能性があります。「こんなことで相談してもよいのかな」と心配する必要はありません。当事務所では、経験豊富な弁護士がいつでもお待ちしております。身近な町医者として、今後とも精進する所存ですので、困ったときにはいつでもご相談ください。

 

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  5. 5 専門家集団によるバックアップで相談者様をトータルサポートします。

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