死亡事故で請求できる損害とはなにか
交通事故により高次脳機能障害を負った場合は、加害者に対して、主に後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の請求ができます。
慰謝料の額は、自賠責保険から受ける後遺障害等級により大きく異なります。
高次脳機能障害で受けられる後遺障害等級や請求できる慰謝料の額や基準、賠償項目について解説します。
高次脳機能障害とは、脳の機能の中でも「高次脳機能」という部分が上手く働かなくなることです。
高次脳機能とは、物事を考えたり、記憶したりする力をつかさどり、人格を形成するために必要な機能です。
病気や交通事故によって脳に大きなダメージを受けると、「高次脳機能」が正常に働かなくなることがあります。
これが、高次脳機能障害です。
人間は社会を築いて共同生活をする生き物ですので、高次脳機能障害は、その人の日常生活に大きな影響を与えます。
一方、高次脳機能障害は、外見から障害の有無がわかりづらく、程度の判定も難しいのが特徴です。
そのため、後遺障害の等級認定がされにくいという問題があります。
当事務所では、交通事故をきっかけに高次脳機能障害になられた方へのサポートをしております。
この記事では、高次脳機能障害になった場合、どのような損害賠償を請求できるかについて説明します。
高次脳機能障害がどのようなものかについて知りたい方は、こちらの記事「高次機能障害にお悩みの方へ」も参考になさってください。
高次脳機能障害は弁護士に相談し適切な賠償金を請求すべき
交通事故により、脳に損傷を負った場合は、重度の意識障害などで寝たきりになってしまう方もいれば、日常生活で介護が必要になってしまう方もいます。
高次脳機能障害は、寝たきりや介護が必要といった目に見える形での後遺症が残るわけではなく、「物事を記憶する」「感情をコントロールする」「論理的に考える」「集中する」といったことが難しくなるという形の後遺症です。
それだけに、他人や第三者からは障害があることが分かりにくく、日常生活の場面でも、後遺症が残ってしまったことを理解してもらいにくいために、様々な困難が生じることがあります。
交通事故により高次脳機能障害になると、日常生活が困難になってしまうだけでなく、精神的苦痛も相当なものになります。
そのため、交通事故が原因で高次脳機能障害が残ったと診断された場合は、弁護士に相談し、適切な賠償金を請求すべきです。
交通事故で高次脳機能障害を負った場合に補償を得る方法と流れ
交通事故で高次脳機能障害を負った場合に適切な補償を受けるためには次の手順を踏む必要があります。
- 高次脳機能障害に詳しい病院で医師の診察を受ける
- 医師に適切な後遺障害診断書を作成してもらう
- 適切な後遺障害等級を獲得する
- 保険会社と示談交渉・裁判を提起する
- 後遺障害に見合った慰謝料と逸失利益を獲得する
一つ一つ確認しましょう。
高次脳機能障害に詳しい病院で医師の診察を受ける
高次脳機能障害に当たるかどうかは、専門の医師に高次脳機能障害診断基準に基づいて診断してもらう必要があります。
高次脳機能障害の診断ができる診療科は、脳神経内科、脳神経外科、リハビリテーション科といった診療科です。
被害者である患者の状態を熟知していれば、交通事故の直後に救急搬送されて入院した病院の医師でも対応できることがあります。
より正確な診断をお願いしたい場合は、「高次脳機能障害専門外来」といった、高次脳機能障害に対応している旨を表記している病院で診察を受けるとよいでしょう。
医師に適切な後遺障害診断書を作成してもらう
高次脳機能障害に詳しい医師に診察してもらったうえで、後遺障害診断書を作成してもらいます。
交通事故によって、高次脳機能障害が残ったことや被害者である患者の症状についての詳細な診断書が必要ですし、脳の状態についてのCTやMRIといった画像、その他さまざまな検査結果なども必要です。
また、日常の生活については、家族が最もよく知っているはずですから、家族の方が、日常生活状況報告書等を詳細に記載します。
なお、医師は必ずしも、交通事故の後遺障害等級や後遺障害認定基準に詳しいわけではありません。
目標とする後遺障害等級を獲得できるかどうかは、後遺障害認定に詳しい弁護士にもチェックしてもらい、足りない部分があれば、医師に追加の資料を求めたり、診断書を書き足してもらう必要があります。
適切な後遺障害等級を獲得する
診断書等の後遺障害等級の申請に必要な書類がそろったら、自賠責保険に申請手続きを行います。
後遺障害等級の申請では、現在の被害者の後遺症の状態から、目標とする後遺障害等級を見極める必要があり、その後遺障害等級で認定を受けるために必要な資料は何かを十分に吟味したうえで、取りこぼしのないように資料を提出する必要があります。
高次脳機能障害に詳しい医師が書いた診断書だから大丈夫と高を括るのではなく、提出前に交通事故に詳しい弁護士にチェックしてもらうことが大切です。
後遺障害等級により、交通事故による高次脳機能障害の補償としての慰謝料等の額が違ってくるため、この段階が非常に重要になります。
保険会社と示談交渉・裁判を提起する
交通事故で負った高次脳機能障害について、適切な後遺障害等級を獲得したら、加害者側に対して損害賠償請求等を求めていきます。
一般的には、弁護士に依頼し、加害者側の保険会社との示談交渉を試みます。
示談交渉により、適切な示談金を獲得できない場合は、訴訟を提起し、裁判において適切な損害賠償額の獲得を目指します。
後遺障害に見合った慰謝料と逸失利益を獲得する
交通事故で後遺障害を負った場合に請求できる補償の内容としては、大きく、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益が挙げられます。
後遺障害慰謝料は、交通事故により後遺症が残ったことによる精神的苦痛について加害者に補償を求めるものです。
後遺障害逸失利益は、交通事故により後遺症が残ったことで、仕事や家事に支障が出たことにより、収入等が減ったことについての補償を求めるものです。
保険会社との示談では、保険会社から後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を示したうえで、それぞれの額を計算して提示されることになります。
ただ、一般の方は、保険会社が示談交渉において示した金額が適切かどうか分かりにくいことがほとんどなので、弁護士に相談して、後遺障害等級に見合った補償額が提示されているか確認することが大切です。
交通事故の損害賠償額を決定する際の3つの基準
他の交通事故の案件でもそうなのですが、高次脳機能障害における損害賠償額は、3つの基準のいずれかを選んで算出します。
どの基準を使って賠償額を算出するかによって、受け取れる額面が大きく異なります。
下記の画像をご覧ください。
交通事故の損害賠償額の計算方法
1 自賠責保険の基準
自賠責により受けられる必要最低限の補償を定めた基準です。
そのため、賠償金の額は3つの基準の中でも最も低い金額になります。
2 任意保険基準
各任意保険会社が定めた基準です。
事故の相手方が任意保険に加入していた場合は、この基準に則って計算された金額が提示されることが多いです。
基準は企業ごとに異なりますが自賠責よりは賠償金の額が多めになる傾向です。
3 裁判(弁護士)基準
弁護士が当事者の代理人として任意保険会社と交渉する際に使用する計算基準です。
弁護士が交渉する場合、示談が成立しないときは、裁判所に訴えを提起することが前提になります。
交通事故を主に扱う裁判所の判例で認められている水準を基にしていることから、裁判基準ともいわれます。
3つの基準の中でも最も賠償金の額面が大きいことが特徴です。
一般的に、事故の相手方が任意保険に加入していた場合、保険会社は自社基準の賠償額を提示してきます。
ときには、「貴方様の場合は、弊社基準より○○万円増額して賠償額をお支払いします」と案内されることもあります。
このような案内をされると、通常よりも多く支払ってもらえて良かった、と思ってしまいがちです。
しかし、実は提示された額は裁判基準と比べると大幅に低かった、というのもよくある話です。
高次脳機能障害は、その方の日常生活に大きな負担を与えます。
場合によっては、ご家族の生活にも影響を与えます。
できるだけまとまった適正額を受け取るためにも、裁判基準を使って交渉ができる弁護士への依頼をおすすめします。
高次脳機能障害の特有の賠償項目
高次脳機能障害のケース特有の賠償項目として、
- 後遺障害慰謝料/近親者慰謝料
- 後遺障害逸失利益
- 自宅改装費
- 将来介護費
などがあげられます。
この他にも、器具や装具の購入費用や、将来かかるであろう雑費も請求できる可能性があります。
今回は、上記の4つについてそれぞれ説明します。
後遺障害慰謝料/近親者慰謝料
高次脳機能障害による後遺障害(事故などによって傷病を受け、治療が終わっても以前の状態にまで回復せず不具合として症状が残ること)が認められると、後遺障害慰謝料が損害として発生します。
慰謝料の額面は、高次脳機能障害の程度に応じて変化しますが、その程度をはかるために6段階の後遺障害等級が認められています。
それぞれの等級の内容と、応じた裁判基準の金額について記載します。
1級 1号
内容:神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
保険金額目安:2,800万円
2級 1号
内容:神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
保険金額目安:2,370万円
3級 3号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
保険金額目安:1,990万円
5級 2号
内容:神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
保険金額目安:1,400万円
7級 4号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
保険金額目安:1,000万円
9級 10号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
保険金額目安:690万円
金額についてはあくまで目安ですので、正確な数字ではありませんが、今後の手続きの指標になるかと思います。
また、高次脳機能障害の場合、本人だけでなく、本人のサポートをする家族にも大きな影響があります。
その場合、サポートをする家族にも慰謝料が認められることがあります。
この慰謝料のことを近親者慰謝料と言います。
近親者慰謝料については、被害者本人の家族構成や生活状況の変化などを考慮して金額が決められます。
弁護士が入らない案件においては、任意保険会社が近親者慰謝料について提示する事例は極めて少ないです。
後遺障害逸失利益
逸失利益とは、障害が残ったことにより、将来的に収入が減ったり得られなくなったりすることに対する補償をするものです。
基本的には、後遺障害逸失利益は下記の計算式を使って求めます。
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対するライプニッツ係数
ライプニッツ係数とは損害賠償額を計算する上で必要な指数のことです。
いわゆる中間利息と呼ばれるものを控除するための指数として使われます。
また基礎収入については、事故に遭う以前に実際に受け取っていた収入をもとに計算するのが一般的です。
学生や専業主婦(主夫)の場合は、賃金センサスを活用して計算します。
労働能力喪失率は、後遺障害の程度によって、以前からどれほど労働能力を失ったかを考慮して決定されます。
基本的には、その方の体の状況を個別に判断するのですが、認定された各等級によって目安となる数字が下記の通り定められています。
1級 1号
労働能力喪失率:100%
2級 1号
労働能力喪失率:100%
3級 3号
労働能力喪失率:100%
5級 2号
労働能力喪失率:79%
7級 4号
労働能力喪失率:56%
9級 10号
労働能力喪失率:35%
労働能力喪失期間については、原則として就労が可能だと考えられている67歳から、症状固定した年齢を差し引いて計算します。
例えば、50歳で症状固定をした方であれば、労働能力喪失期間は67-50=17年となります。
自宅改装費
高次脳機能障害の程度によっては、日常生活に支障が出るため自宅を改装する必要があることもあります。
例えば、手すりを取り付けたり、段差を取り払ったりとバリアフリー化する例があります。
後遺障害が重篤であると認められた場合はこのような自宅改装費も請求できる可能性があります。
自宅だけでなく、車いすの購入や車の購入費用といった項目でも補償されることがあります。
将来介護費
高次脳機能障害による後遺障害の等級認定基準には、「介護を要するもの」といった文言が含まれています。
このように、重度な高次脳機能障害の場合、将来的な介護費用の補償が必要となります。
将来介護費用の計算は、介護を家族でするのか、介護施設を利用するのかで変わってきます。
家族が介護をする場合には、1日あたり8,000円程度が費用の目安とされていますが、その方のケースごとに具体的な額は異なります。
他方で介護施設を利用する場合は、実際にかかる費用から補償額を算出します。
将来介護費は、本人が少しでも負担を減らして生きていくことだけでなく、介護などでささえる家族の負担を減らすために非常に必要なものです。
弁護士にご相談いただければ、依頼者様の利益を最優先に交渉いたしますので、ぜひご相談ください。
高次脳機能障害でお悩みの方は弁護士法人iにご相談ください
ここまでご説明しました通り、死亡事故には特有の損害賠償項目があります。一般的な交通事故よりも手続きが複雑になる上、賠償額の算出基準によっては受け取れる額が大きく変化します。
弁護士にご依頼いただければ、遺族の方の利益が少しでも大きくなるよう交渉いたします。
煩雑な手続きも弁護士が代理で行いますので、心身双方の負担を軽減できます。
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弊所で取り扱った事例
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解決事例161 男性(77歳) ・訴訟手続で適正な賠償額を獲得した事案
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