交通事故による上肢障害が後遺障害と認定される条件とは?気になる基礎知識と併せて徹底解説!
はじめに
交通事故により障害が残ると、その後の生活は大きく変わります。障害により、これまで出来ていたことが出来なくなるのは本当に辛いことです。しかし、悲しんでばかりはいられません。なぜなら、その後も生活は続いていくからです。
その後の生活を続けていく上で大切になること。それが等級認定です。しかし、等級認定が大切だと言われても知識がない方が判断するのは簡単なことではありません。また、ご自身やご家族のこととなると、冷静に判断することは難しくなります。だからこそ、まずは基礎的な知識を身につけることが大切になります。
今回は、上肢障害が後遺障害と認定される条件について詳しく解説します。本記事を読むと、上肢障害に関する基礎知識だけでなく、予想される等級、適正な等級認定を受けるための注意点が分かるので、上肢障害にお悩みの方や、上肢障害に悩まれている方の支えになりたい方は、ご一読ください。
上肢障害の基礎知識
上肢を一言で説明すると「肩や腕」のことです。中でも「肩関節」「ひじ関節」「手関節」の3つは、後遺障害等級認定において重要視される箇所になります。なお、手関節よりも先の部分については上肢ではなく手指として扱われます。
そんな上肢を形成しているのが肩甲骨や鎖骨、上腕骨や前腕骨などです。事故により、これらの部分が骨折、あるいは脱臼してしまい、治療を実施したにも関わらず、骨が変形したり関節が元のように曲がらなくなったり、切断により短くなってしまった場合は後遺障害の対象になります。
複雑な構造をしている肩関節は損傷が見落とされてしまうケースが少なくありません。そのため、低位の等級しか認定されないケースもあります。このような事態を避けるためにも、まずは基礎的な知識を身につけておく必要があるのです。
なお、上記の状態に該当しない場合でも、事故が原因とされる神経症(痛みなど)が残った場合は、第12級13号か第14級9号に認定されるケースもあるので覚えておきましょう
上肢の後遺障害4つの分類
上肢の後遺障害は大きく分けると下記の4つに分類されます。
・機能障害
・変形障害
・欠損障害
・醜状障害
ここからは、各障害の基礎知識について解説します。
機能障害
まずは、機能障害について見ていきましょう。
機能障害とは、事故により身体の動きが制限されるようになってしまった状態を指し、原因の多くは骨折や脱臼、じん帯や腱の損傷、神経損傷によるマヒにあります。
上肢は、複雑な構造をしているため一部の損傷により「可動域制限」が生じることも珍しくありません。可動域制限が生じると、それまで出来ていた動きができなくなるので、日常生活に支障をきたすことがある状態といえます。
ただし、人工関節や人口骨頭を挿入したことで可動域が戻った場合も機能障害が認定される可能性が高くなるので1つのポイントとして覚えておきましょう。また、骨や関節に問題がなくても、神経の断裂や圧迫などによりマヒが生じることもあります。この場合も、基本的には機能障害と認定されるので覚えておきましょう。
なお、機能障害における後遺障害等級は可動域によって決まります。障害がない方の上肢と比較して、可動域の制限がどれくらいなのかを判断するのです。例外として、自動値が採用されるケースもありますが、この場合は別の検査が必要になるので、気になる方は医師と相談したうえで判断してください。
変形障害
続いて変形障害を見ていきましょう。
変形障害は、治療しても変形したままの状態になることです。この変形障害には、偽関節を残し著しい運動障害を残す場合や、偽関節を使用する場合、長管骨に変形を残す場合も含まれています。
なお、鎖骨や肩甲骨の扱いは注意しなければいけません。なぜなら、鎖骨や肩甲骨は医学的には上肢に分類されるのですが、変形障害においては「体幹骨の障害」として扱われるからです。この点は1つの知識として覚えておきましょう。
変形障害については、もう1点覚えておきたいことがあります。それが、基本的に逸失利益が認められない点です。機能障害や欠損障害は、基本的に逸失利益の賠償が受けられます。逸失利益とは、障害がなければ得られたはずの労働による利益のことです。変形障害のみが残った場合は、基本的に逸失利益が認められません。なぜなら、変形自体が労働力を低下させる原因になると判断されるからです。
欠損障害
上肢の一部分を失った場合は、上肢の欠損障害として扱われます。等級は、失われた部分の大きさにより決まるのが特徴です。
そんな上肢の欠損障害は、ひじ関節以上で失った場合と手関節以上で失った場合に分けることができます。
ひじ関節以上で失ったケース
・肩甲骨と上腕骨が離断した状態
・肩関節と腕関節の間で切断した状態
・上司を手関節以上で失った状態など
手関節以上で失ったケース
・ひじ関節と手関節の間で切断した状態
・橈骨及び尺骨と手根骨が離断した状態
醜状障害
醜状障害とは、交通事故による傷あとが残った場合に認められる障害です。主な状態としては、下記のものがあります。
・瘢痕
・線状痕
・ケロイド
ただし、後遺障害と認定されるには「露出面が人目に付く程度以上」という条件があります。人目に付く程度以上という判断基準は、人によって見解が分かれるため、認定されるまでには書面審査の他に面接審査を受けなければいけません。面接審査によって、症状の状態や部位の形態の確認が行われます。
各後遺障害の予想される等級
等級は、後遺障害の状態により判断されるのですが、厳密な条件が定められているので誰でも簡単に判断できるものではありません。しかし、知識として覚えておくことは大切です。ここからは、各後遺障害の予想される等級について解説していくのですが、その前に2つの言葉を理解しておかなければいけません。それが「用を廃した」と「用を全廃した」です。
2つとも予想される等級を理解するうえで大切な言葉になるので、違いを理解しておきましょう。
用を廃したとは日常生活において動作ができない状態、もしくはそれに近い状態のことです。一方、用を全廃したとは上肢の三大関節のすべてが用を廃した状態であることを指します。
以上の違いを理解したうえで、各後遺障害の予想される等級を見ていきましょう。
・機能障害
1級:両上肢における3大関節の用を全廃
5級:片側上肢における3大関節の用を全廃
6級:片側上肢における3大関節のうち2関節の用を廃した状態
8級:片側上肢の3大関節のうち1関節の用を廃した状態
10級:片側上肢の3大関節のうち1関節の機能に著しい障害がある状態
12級:片側上肢の3大関節のうち1関節に機能の障害がある状態
なお、関節の用を廃した状態とは「関節の強直」「関節の完全弛緩性マヒ、またはこれに近い状態を指します。これに近い状態と聞くと、曖昧な表現に感じるかもしれませんが、他動で可動するものの、自動では可動域の10%程度以下になっている状態と定義されています。
・変形障害
7級:片側上肢に偽関節を残し、著しい運動障害が残った状態
8級:片側上肢に偽関節を残す状態
12級:長管骨に変形を残す状態
押さえておきたいポイントは長管骨に変形を残す状態です。こちらも、厳密な定義が存在していて、下記の状態のいずれかに該当する状態のことを指します。
上腕骨が変形し、15度以上屈曲して不正癒合した状態
橈骨、尺骨の両方が変形し、15度以上屈曲して不正癒合状態
橈骨又、尺骨のいずれか一方の変形が著しい状態
上腕骨、橈骨、尺骨の骨端部に癒合不全を残す状態
橈骨、尺骨、骨幹部、骨幹端部に癒合不全を残し、硬性補装具を必要としない状態
上腕骨、橈骨、尺骨の骨端部の大部分を欠損した状態
上腕骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少した状態
橈骨、尺骨(骨端部を除く)の直径が1/2以下に減少した状態
上腕骨が50度以上、外旋又は内旋で変形癒合した状態
・欠損障害
1級:両上肢を関節以上で失った状態
2級:両上肢を手関節以上で失った状態
4級:片側上肢をひじ関節以上で失った状態
5級:片側上肢を手関節以上で失った状態
・醜状障害
14級:上肢露出面に手のひら程度でひどいあとを残す状態
なお、ここで紹介している等級はあくまで参考として覚えておきましょう。なぜなら、等級認定は医師による診断が欠かせないからです。詳しい状態や等級の扱いについては、医師に確認してください。
上肢における後遺障害の認定条件
上肢における後遺障害には認定条件があります。それが「画像所見」です。ここでは、上肢における後遺障害の認定条件を詳しく見ていきましょう。
上肢後遺障害と認定されるにはレントゲンやMRI、CTなどによる画像を基に障害の原因となる症状が認められなければいけません。これを画像所見と呼びます。画像所見がなければ、認定されるのは神経症状だけになるので、適正な等級認定を受けるためには画像所見が欠かせません。
例えば、機能障害が生じた場合は関節の可動域が測定されます。しかし、関節の可動域測定だけで等級が決まるわけではありません。なぜなら、可動域制限の原因を画像から証明しなければいけないからです。適正な等級認定を受けるためには、骨折や靭帯の損傷により可動域が制限されていることを証明する必要があります。これは、適正な等級を受ける上でも非常に重要な知識なので忘れずに覚えておきましょう。
適正な等級認定を受けるための注意点
適正な等級認定を受けるには以下の2つの点に注意しなければいけません。どちらも、その後の認定に大きく関わる重要な知識なので、しっかりと理解しておきましょう。
早期検査
適正な等級認定を受けるには、早期検査が欠かせません。なぜなら、等級認定を受ける上で、画像所見が重要になるからです。そのため、なるべく早く画像を撮影しておくことが大切になります。
実は、細かな骨折や筋肉や靭帯の異常は時間が経過すると画像に映らないケースがあります。つまり、画像所見が難しくなるということです。これでは、適正な等級認定を受けることができません。このような事態を避けるには、事故直後にすぐ病院に行き画像を撮影しておくことが大切になります。
また、画像を撮影する際はレントゲンだけでなくMRI画像を撮っておくことも重要です。なぜなら、レントゲンだけでは映せない損傷があるからです。
特に、手首の骨折などは注意しなければいけません。手首の骨折は強い痛みがでにくいため、骨折が見逃されてしまうことがあります。そのため、強い痛みでなくても痛みが長引く場合は専門医に相談して画像を撮影しておくことが大切です。ある程度の時間が経過してしまうと、事故と骨折の因果関係を証明するのが難しくなるので、早めの対応を心がけてください。
専門家への相談
適正な等級認定のためには、専門家への相談も欠かせません。中には、自分一人で対応しようと考える方もいらっしゃいます。しかし、事故という予期せぬトラブルに巻き込まれた後は、心身共に疲弊しているので無理をしないことが大切です。また、事故後の生活を考えると不安で眠れなくなる方もいらっしゃいます。専門家に依頼することで、余計な心配事を減らせるのは大きなメリットです。大変な時期だからこそ、心と身体を休めなければいけません。
不安に押しつぶされてしまう前に、専門家への依頼を検討してください。早く動けば動くほど、心身の負担軽減につながるうえに迅速な対応が可能になります。事故後は、早急に弁護士への依頼を検討しましょう。
まとめ
交通事故により障害が残った場合は、等級認定を受けることが可能です。適正な等級認定を受けることで、将来に対する不安を軽減できます。そのため、適正な等級認定を受けることは重要です。
身体の中でも肩や腕を指す上肢は複雑な構造のため、損傷が見落とされてしまうケースも少なくありません。損傷が見落とされてしまうと、適正な等級認定を受けることが難しくなります。このような事態を避けるためには早期対応が重要です。しかし、事故後すぐに対応していくことは簡単なことではありません。だからこそ、早めに専門家に相談することが大切になるのです。 不安を少しでも軽減するには、早めの対応が大切になります。相談してみようかどうか悩んだ段階で、行動することをおすすめします。大切なのは、身体だけでなく心も休ませることです。ご自身のためにも、不安を感じた時点ですぐに相談するようにしてください。


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